生前葬は本人が元気な間に、親しい人へ感謝を伝える場として設けられるものです。

終活の1つとして注目を集めていますが、一般的な葬儀と異なる部分も多いため、具体的なことはよくわからないという人も多いでしょう。

そこで本記事では、生前葬について詳しく解説。メリット・デメリットや具体的な流れ、準備する際のポイントなどを説明します。

生前葬とは

生前葬とは、生前に行う葬儀のことです。故人を偲び行う葬儀と異なり、本人が元気に過ごしているうちに執り行い、縁のある人たちに感謝を伝えることが主な目的。

また、生前葬にはいくつかの特徴があります。例えば、宗教や形式にとらわれず自由なスタイルで行われることは生前葬の大きな特徴です。

亡くなってから行われる葬儀は、基本的に故人の信仰していた宗教に則ったものになります。お寺にお墓がある家なら仏教式の葬儀、キリスト教徒であったならキリスト教式の葬儀です。

しかし、生前葬にはこのような宗教色はほぼ見られません。自分で好きなテーマを決めて演出する人も多く見られます。また、パーティスタイルなどカジュアルな雰囲気で行われることも多いです。

なお、生前葬はその内容も特徴的。一般的な葬儀では遺族や故人と縁の深かった人からの挨拶・メッセージや、故人を弔うための儀式が中心となります。

しかし、生前葬では、写真や思い出の品を展示し本人のこれまでの人生の歩みを振り返ったり、本人が挨拶をしたり、本人が直接関わる内容が多めです。その他、会場を盛り上げるための演出が盛り込まれることも多いでしょう。

生前葬の流れ

それでは、一般的な生前葬の流れを見ていきましょう。まずは司会者が生前葬の開式の言葉を述べます。そして主催する本人の挨拶、本人のこれまでの人生を振り返り・紹介などと続きます。

来賓から挨拶をしてもらい、その後は会食・歓談の時間です。参加者に飲み物や料理とともに会話を楽しんでもらいます。

会食・歓談と並行して、親しい人から本人に向けての言葉、余興などのプログラムが続きます。全てのプログラムが終わったら、司会者が閉式の言葉を述べ、生前葬は終了です。

生前葬のメリット・デメリット

生前葬を行うことには、メリット・デメリットの両方があります。生前葬を検討するなら、どちらも理解しておくことが大切です。

生前葬のメリットとしてまず挙げられるのは、元気なうちに親しい人たちに自分から直接感謝を伝えられることです。当たり前ではありますが、亡くなった後の葬儀では、自分で生前の感謝を示すことはできません。

もしかしたら、「あの人にこんなことを伝えておきたかった」など心残りになってしまう可能性もあります。しかし、生前葬を行えば、自分の口からしっかり感謝を示すことができます。気持ちにすっきり区切りをつけることができるでしょう。

デメリットは、周囲の理解を得にくい可能性があることです。生前葬は注目されているものではありますが、まだまだ一般的とは言えません。

そのため、生前葬に対して否定的な考えを持っている人も少なくないと考えられます。生前葬を行うことを、家族などに反対される可能性も。せっかく開く生前葬、感謝を伝える相手でもある家族に理解を得られないのは悲しいことです。

企画した本人も参加者も、皆の心に残る良い生前葬にするため、家族や参加者には行う目的などを説明し、理解を得ることが大切です。

生前葬を行う準備で必要なこと

生前葬を行う場合は、事前にしっかり準備しておくこともポイント。例えばどれくらい費用をかけるかを決めるのは重要です。

生前葬を成功させるため、綿密な予算計画を立てましょう。生前葬の費用は、主催者が全額自己負担する、あるいは参加者に会費を求めるなどの方法があります。会費制にする場合は、かかる実費を参加する人数で割って決めるのが一般的。

費用相場は開催する場所や人数で異なります。レストラン・宴会場などで、数十名規模で行うなら20~30万円ほどが相場です。高級ホテルなど、少し格式の高い場所で行う場合は、同じ数十名規模でも120~150万円ほどと相場も高め。

予算額によってできることの幅も変わります。誰が負担するのか、どのくらい予算をかけるのかは、じっくり検討してください。

また、生前葬を依頼する業者を探すのも大切な準備です。自分で1から全て企画・手配することも不可能ではありませんが、経験やノウハウのある専門業者に任せた方が安心でしょう。

これまで生前葬を行ってきた実績があるため、失敗の心配をせずに済みます。準備をしていく中で「これはどうしたらいいの?」と疑問が発生した際、すぐに相談できることもメリットです。

なお、参加者には生前葬への招待状を用意し送る必要があります。招待する相手は親族のほか、仕事で関わりのあった人、趣味で親しくしていた人、昔からの友人など幅広です。

ただし、前述した通り、参加して欲しい人の中には生前葬に対して抵抗感を覚える人もいるかもしれません。招待状を送る際は、自分が生前葬を行う目的などを十分説明し、理解を得られるようにしましょう。

その他、生前葬の中で挨拶をお願いする人に事前に依頼しておくこともお忘れなく。具体的には来賓挨拶、親しい人からの言葉などです。

結婚式で主賓や友人代表に挨拶を頼むことがありますが、同じようなイメージで考えてください。もし生前葬で余興を盛り込むなら、そのお願いも必要です。そして準備で最も意識しておきたいのは、参加してくれる人たちへの感謝の気持ちです。

生前葬に来てくれる人たちに、これまで伝えてこられなかった感謝を伝える場であることをしっかり理解し、おもてなしの心とともにゲストファーストで準備を進めましょう。

生前葬に関してよくある疑問

生前葬に関し、多くの人が疑問に思いやすいのが「亡くなった後の葬儀はどうするのか」ということです。「もう生前葬を行っているから葬儀は省略すべき?」「2度も出席してもらうのは迷惑?」などと不安を抱えている人も。

結論から言えば、生前葬を行った場合は葬儀を省略すべきなどということはありません。先に述べた通り、生前葬と葬儀は別物です。行う目的も異なるため、生前葬は生前葬、葬儀は葬儀と考えるべきでしょう。実際、生前葬を行った後、葬儀も執り行うケースが多く見られます。

ただし、生前葬を行ったことで葬儀を簡素なものにするケースは少なくありません。生前葬で故人が直接親しい人にこれまでの感謝を伝え終えているため、改まってのお別れの機会は省略するなどの理由からです。ごく近しい親族での家族葬などがよく選ばれています。

また、生前葬を行った後の生活に関しても疑問に思う人が多いようです。「生前の感謝を伝えたから、今後は交流を差し控えるべき?」などとイメージするかもしれませんが、そんなことはないので大丈夫。

これまで通りのお付き合いを継続して問題ありません。生前葬は終活の1つのようなものと考えてください。自分が亡くなった後のことを、生きている間に考え、悔やんだり心残りになったりしないよう、落ち着いて整理しておく、生前葬もそのような活動に入ります。

生前葬を終えた後、生前整理や遺産の整理、葬儀・お墓の事前の手配など、引き続き終活を進めていくのも良いでしょう。

生前葬でこれまでの人生を振り返り親しい人にありがとうを伝えよう

生前葬を行うことで、親しい人たちに改めて感謝を伝えられるとともに、自分のこれまでの人生を振り返る良い機会も得られるでしょう。

まだまだ広く浸透しているわけではありませんが、生前葬を行う主旨を参加者に理解してもらった上、心を込めて準備すれば、皆にとって思い出深い時間が過ごせるはずです。ぜひこの記事を参考に、生前葬について検討してみてください。

監修者

記事監修者

株式会社キノヤマ代表の山上 芳範。
キノヤマでは、故人をお見送りするのに相応しい、さまざまなプラン・スタイルのお別れ会やセレモニーをご提案。心に遺るお葬式となるよう、全力でフルサポートいたします。