社葬はそう頻繁に行われるものではありませんが、会社に大きく貢献している人物が亡くなった場合には執り行われる可能性が高いです。
いざというときに慌てないためにも、社内の規約や要した費用の経理処理など、きちんとまとめておいた方が良いでしょう。
こちらでは、社葬の手続きを進める方法や経理処理などについて見ていきます。
社葬とは?
社葬とは、故人の遺族が執り行う個人葬とは異なり、その会社の発展に寄与した故人を偲び、会社が主体で追悼の儀式を執り行うことです。
この場合、施主は遺族ではなく会社になりますし、遺族が執り行う個人葬とは別に、会社で社葬を行っても問題はありません。
社葬というと大規模な企業のみが執り行うイメージを持たれがちですが、実際には社葬で負担した費用の一部を経費に挙げることができるため、中小企業や個人事業者が執り行うことも可能です。
社葬の場合、会社が施主になるので実質的には社員が手続きを進めることになります。
とはいえ、会社の関係者が亡くなった場合に毎回執り行うのではなく、一般的には創業者や会長、社長、役員などの上席にいる経営陣の他、会社に特別大きい貢献をした人、業務中に亡くなった人など、一部の人に限られるため、件数としてはそれほど多くはありません。
社葬では施主は会社ですが、実際に打ち合わせや挨拶などをする喪主は遺族が担い、葬儀委員長として実際の葬儀の運営やサポートを行う責任者が別途就くのが一般的です。葬儀委員長はその会社の社長や重役が務めることが多く、手続き自体は社員が担うことが多いです。
社葬は会社が費用を負担する一方で、故人の会社への貢献や功績を称えるとともに弔意を示す場を設けられること、取引先や顧客などに会社の新体制を周知すること、社内の団結力を高めることなど多くのメリットを見込んでいます。
会社でどのようなメリットを期待しているのか、そのためにどう手続きを進めれば良いのかを考慮した上で、社葬の準備を進めるようにした方が良いでしょう。
社葬はどんな時に行われる?
社葬は基本的に、費用が会社の経費として損金処理できる場合に執り行われます。法人税法基本通達において社葬の損金処理について規定がありますので、そちらに沿った内容であれば社葬が執り行われることがほとんどです。
通達では社葬を行うことが社会通念上相当と認められる場合に損金処理が可能とされています。具体的には、社外への広報として有益な社葬のなる場合、つまり経営や起業の発展に特に貢献した人、業務中に死亡した殉職者などが死亡した場合が妥当と考えられます。
ただし、条件を満たしていても社葬の費用が損金処理できるとは限りません。社葬を行うことが決まった場合は、臨時取締役会を開催して議事録を作成しておいた方が良いでしょう。そのためには、社葬取扱規程を社内で作成しておいた方がスムーズに進められます。
社葬には、遺族による個人葬とは別の日に行われるものの他、遺族と会社が協力して行う合同葬、宗教や儀式を極力排したお別れの会などがあります。
企業色が強いのは一般的な社葬ですが、合同葬は葬儀費用や運営の負担が遺族と協力することで軽減されますし、お別れの会では演出や会場の自由度が広がるなど、それぞれに特徴がありますので、自社の方針に合った内容で決めると良いでしょう。
なお、社葬は一般的に葬儀とは別に四十九日の法要前に執り行われることがほとんどです。遺族の法要準備なども考慮して、費用や手続き上の負担をできるだけかけないように配慮しましょう。
社葬手続きの進め方
社葬は準備から実際の葬儀、式典後の手続きまで様々な作業があります。また、社内だけでなく遺族の意思も尊重しなければなりませんので、早めに作業を進めましょう
事前準備として、社内で社葬を行うことに関する臨時取締役会を開き、葬儀委員長や手続きの担当者を選出します。その後、葬儀委員長が遺族と打ち合わせを行い、遺族の意向を確認した上で日程や葬儀の内容、費用の負担などについて取り決めを行います。
葬儀委員長は社長や会長など、会社の役員が選任されることが多いため、実際にこまめに連絡を取れる担当者を別途選任しておくと良いでしょう。
次に、社葬の規模や参列者の交通の手配、会場準備、宗教の形式、日程などの細かい取り決めを行います。
具体的な式典の準備については葬儀業者に一任することも可能ですが参列者のリストアップや日程調整、関係各所や取引先への通知、見積書の作成などは社内で行わなければなりません。
喪主は遺族の代表者が担いますが、社葬の案内や当日の弔問の対応などを行うため、社内の担当者と綿密に連絡を取り合う必要があります。
当日は、葬儀業者に任せるところが大きいですが、会場の確認や遺族、参列者への対応、供花や供物、弔電等の確認など社内で対応すべきことも少なくありません。
社葬の流れは宗教や会社の方針によって異なりますが、一般的には黙祷や故人の経歴の紹介、弔辞、弔電の紹介、葬儀委員長による謝辞、喪主の挨拶、献花や焼香などが行われます。
社員は式の進行をサポートしたり、受付やクローク、式場案内を対応したりと多くの業務がありますので、担当を決めておいた方が良いでしょう。
社葬終了後は、参列者へのお礼状や名簿、報告書などの作成をしなければなりません。弔電や弔事、香典や供花等のリスト、会計報告書などまとめるものがたくさんあります。
さらに、報告書を関係者に提出したり、故人の給与計算をしたり、社葬で発生した費用の経理処理をしたりと社葬の後も多くの作業が残されています。
社葬で要した費用の経理処理
社葬は基本的に会社が費用負担をしますので、経費として損金算入することが可能です。しかし、必ずしもすべての支出が損金に計上できるわけではありませんので、通常の経理処理同様にきちんと書類を揃えておきましょう。
社葬費用は規模にもよりますが、ある程度まとまった人数で執り行う場合には会場や料理だけで100万円以上、祭壇や装飾、香典返し、運営なども含めれば400~500万円程度になることも珍しくありません。
会社で社葬取扱規程があれば大まかな見積もりを出すことも可能ですが、ない場合には業者から見積もりを取り寄せておきましょう。
実際に発生した費用は、領収書をすべて保管しておくことはもちろん、納品書や見積書なども全て管理して、内訳についても記録しておくことが重要です。僧侶へのお礼など領収書が手に入らないものに関しても、明細を控えておきましょう。
また、社葬では香典を辞退するケースも多いですが、受け取った場合には遺族に渡すのが一般的です。会社が受け取った場合には課税収入になりますので、内訳を明確にしておきましょう。
経理処理する場合、社葬費用は福利厚生費の扱いになります。ただし、儀式よりも会食が中心の場合は接待交際費扱いになることもありますし、合同葬で遺族と費用を分担する場合は、一旦立替金として支払い、精算後に会社が負担した額を損金処理することになります。
損金処理が可能な支出は葬儀業者に支払った基本料金や式場の利用料、交通費、お布施、案内状やお礼状の郵便料金、スタッフへの支払いなどです。一方で、通常は遺族が負担すべき戒名料や法事の代金、棺や骨壺代、墓地や墓石の費用などは損金にはなりません。
社葬はマニュアルの作成がおすすめ
このように、葬儀会社に依頼すればほとんどの手続きを代行してもらえる個人での葬儀とは異なり、社葬は社内で処理しなければならない業務が多いです。
通常業務に加えて社葬の準備を進めなければなりませんが、いつ社葬の対象となる人が亡くなるのかは誰にもわかりません。いざというときにスムーズに進められるように、手順や資料をまとめておくと良いでしょう。